人の発達の影響は遺伝説か環境説かそれとも相互作用説?

人の発達の影響は遺伝説か環境説かそれとも相互作用説?
今回のテーマは、

人の発達の影響は遺伝説か
環境説かそれとも相互作用説か?

について紹介します。

人間の発達を考える場合、

必ず問題となるのが

遺伝か環境、

どちらの影響が強いのか?

という点です。

この遺伝か環境かという
対立概念は

生得的 対 経験的

とも言い換える事が出来ます。

この対立は歴史的に見て
最初に登場したのは、

人間の発達は全て遺伝によって
決まってくるという成熟説です。

その後、人間が置かれている
環境的要因が発達には
大きく影響すると言う

環境優位説(学習説)が
提起されました。

今日では、その両者が
ともに影響し合っていると言う

相互作用説が一般的になっています。

ではそれぞれの主張について
詳しく見ていきましょう。

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人の人生は遺伝によって全て決まる?

16~17世紀頃に描かれた挿絵では

精子微人のような
人間が描かれているようです。

精子の中に小さな人がいて、

人の一生は、生まれる前の
精子段階から全て決まっている
という考え方です。

例えば、

靴職人の家に生まれてくる
子供は生まれる前から

靴職人になる事が約束され、

何歳になったら死ぬ
というようにです。

人の発達は、遺伝によって
全てが決まるという見方が
1930年代頃まで続いていました。

遺伝説(成熟説)を支持する
代表的研究としては

ゲゼルとトンプソンによる
双生児研究が有名です。

人の発達の影響は遺伝説の立場

ゲゼルらは、遺伝子が発達の
過程を方向付けるメカニズムを
「成熟」と呼び、

環境が発達の順序に影響を
与えないと考えていました。

この彼の考えを実証するために
行われた双生児の実験的研究は
非常に有名です。

その実験内容は以下のようなものです。

生後46週間になった
T君とC君の双子がいました。

T君に階段登りの訓練を
6週間行った所

26秒でのぼれるようになりましたが

その後、変化はあまり
ありませんでした。

もう一方のC君に対して、

何の訓練も行われない状態で
6週間後に測定した所、

のぼるのに45秒かかりました。

その後、二週間C君を
訓練した所、

10秒でのぼれるようになっていました。

つまりT君の方が3倍も長い
期間訓練を受けていたにも関わらず

立った2週間練習した
C君の方が結果的に早く
のぼれるようになっていた訳です。

この事から、早期からの
学習の効果は成熟には
及ばない事をゲゼルは実証しようとしたのです。

非訓練児の階段登りの成績は、
訓練時のそれと実質的には
変わりがない事が示されました。

つまり、時期が来て、
運動機能などが成熟しなければ、

いくら早くから訓練を始めても
無駄であるというのです。

従って学習効果は成熟には
及ばないという考え方から
ゲゼルの学説は、

成熟優位説と言われています。

人の発達の影響は環境説の立場

ゲゼルの見解とは異なり、

人の発達はその人が
置かれている環境によって

決まってくるという考え方が
環境説です。

学習説や経験説と言われる事もあります。

この学習説を信奉し
学習する事で人の行動が
成立すると考えたのが

行動主義心理学者の
ワトソンさんです。

彼の考え方は古典的条件付けモデルを
人間の行動にも適用しようとしたものです。

彼の主張を裏付ける
有名な発言があります。

「私に1ダースの健康で肢体の
完全な乳児と私が望む育児環境を
与えてくれたまえ。

そうすれば私は、
どの子供も訓練して、

医師、法律家、芸術家、大事業家
にしてみましょう。

子供の才能、好み、傾向、能力、
適性、祖先の民族など問題ではない」

…という言葉です。

ワトソンは、生まれたばかりの
赤ちゃんを自分に預けてもらえさえすれば、

望み通りの能力や技術を持つ
人間に育て上げ、

赤ちゃんの時に決めた
職業に必ず就くようにする事が
出来ると主張しました。

人の発達は遺伝説も環境説もという立場

さて、遺伝説、環境説の
理論論争を調停するような
学説を唱えたのは

シュルテンの考え方です。

シュルテンは、
輻輳説(ふくそう)を提唱して

発達は遺伝要因と環境要因が
輻輳(収束)してはじめて
決まっいくと主張しました。

シュルテンの輻輳説は

現在の相互作用説に
近いものと言えますが

1.発達は遺伝と環境の
単純な加算ではないと言う点、

2.遺伝と環境が、色々な
特性、才能、素質の開花に
どのような影響を与えるのかとう

詳細な議論がない点が
欠点として指摘されます。

この輻輳説を説明する
図式として有名なのが

ルクセンブルガーの図です。

ルクセンブルガー

(U=Umfeld(ドイツ語で環境) E=Erbgut(ドイツ語で遺伝))

例えば図中のXが左に移動すればするほど
遺伝の影響が強くなり、

環境からの影響が小さくなります。

逆に右に移動すれば環境からの
影響が大きくなるというものです。

この説では遺伝と環境は
別々のものであり

各要因を持ち寄っているに
すぎないという見方がなされています。

人の発達の影響は相互作用説の立場 

一方で、これに対して
ジェンセンは、

相互作用説の一つである
環境閾値(いきち)説を提唱しました。

遺伝によって与えられた
才能を伸ばすために必要な

環境の適切さの最低限度を
閾値と言います。

環境閾値説には

持って生まれた才能を伸ばすためには、

相応の環境が必要だと言う
考えがあり、

この図はその指標を
見るためのものです。

ジェンセン

例えば身長のように
環境にそれほど影響を受けないものは

閾値が低いとされ、

音感のように環境要因の
影響を強く受ける場合、

閾値が高いという考えです。

この説では

身長(A)は

よほど劣悪な環境でない限りは
発達に支障を来す事はありませんが、

知能テストの成績(B)では
やや環境から受ける影響が大きくなります。

また学校での学業成績(C)になると

環境の重要度が増してきます。

ところが絶対音感や
外国語音韻の弁別(D)は

環境要因が重要になってくるのです。

現代では、

遺伝的要因と環境的要因は

相互に影響を与え合って
発達を支えているので

どちらか一方が優位に立つ
という事はないと考えられています。

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