チーズ造りに関わる微生物、レンニンとキモシンと乳の凝固作用

チーズ造りに関わる微生物、レンニンとキモシンと乳の凝固作用
今回のテーマは、

チーズ造りに関わる微生物、
レンニンとキモシンと乳の凝固作用

について紹介します。

乳の発酵から、

ヨーグルト、バター、チーズ

など人類は発酵技術を
発達してきたわけですが、

さて、チーズ造りに置ける
人類の最大の知恵はレンニンの
使用にあると言われています。

放置しておけば微生物の作用で
勝手に発酵するヨーグルトと違い、

チーズは特殊です。

レンニン(rennin)というのは、

若い反芻動物の胃液中に存在する
プロテアーゼというタンパク質分解酵素
の一種なのですが、

子牛の第四胃から分泌され、

母牛から与えられた母乳中の
タンパク質を凝固させる酵素です。

しばらくの間これを
レンニンと呼んでいましたが、

レニン(renin)という
腎臓皮質に存在する別のプロテアーゼ
と間違えやすい事を理由に、

この酵素は最近では
キモシン(cymosin)と呼ぶ事が
通常となっています。

つまりチーズ造りに関わる
レンニンとキモシンは同じものです。

発酵食品としてのチーズの発見と歴史

若い子牛の胃に存在する
キモシンは、

母牛から与えられた乳に作用して
凝固物と乳清に分けますが、

凝固物の主体はカゼインと言う
タンパク質や脂肪で、

これも極めて栄養価に富み、
子牛に効率よく栄養源を供給する
事ができます。

さて、こうしたレンニンとキモシンと
乳の凝固作用の最初の発見と、

それによるチーズの誕生には、

実に大昔に遡る知恵があります。

一体どこの誰が一番始めに
この現象に気がついたか…

それは知る術もありませんが、

大方の考え、または想像によれば
以下のようなものだったろうと、
推測されています。

今から数千年前にアラビアの
商人が若い羊の胃袋で作った水筒に
乳を入れて旅をしていた所、

胃袋に残っていたキモシンが
乳を凝固してチーズのような物が、
始めてできました。

それを食べてみた所、風味も良く、

以後は意識的に若い羊の胃の袋に
乳を入れて凝固しさせ食べるようになった…

というのが最初だというのです。

レンニンとキモシンと乳の凝固作用

とうじ微生物という概念はなく、

発酵技術という概念はまだ
なかったでしょう。

始めの頃はこの現象に
人々は驚いた事でしょう。

別にアラビアの隊商でなくても、

乳を毎日利用して、その扱いに
慣れていたモンゴルや中央アジアの
草原に住む牧草民族でも、

乳の凝固現象は発見できたでしょう。

それはそれとして、

とにかく史実では紀元前3500年には、

メソポタミア地方で乳牛の飼育が行われ
搾乳、乳加工が行われていた事は、

その様子を書いた石版の発見によって
知られています。

中央アジア地方ではそれより
さらに多く紀元前4000年頃には、

チーズの製造が行われたと語られています。

そう考えるともの
すごく深い歴史があり、

人類と関わりがある食べ物として、

当時は科学的根拠はなく、
全て経験と伝承による応用だった
はずでしょうが、

レンニンとキモシンによる
乳の凝固作用を応用した

チーズ造りというのは古い時代から
あったというのは間違いありません。

チーズ造りの技術の発展と進化

美味しくて保存性も良く、
栄養価も高い、、

多くのメリットを人類に
もたらす発見だったわけで、

この技術はますます発展します。

そのうちに誰となく
子牛の胃袋を水筒としてではなく、

乳の凝固を目的とした
容器に使うようになり、

さらにその胃袋を細片にする
などして乳を混ぜ、

意識的に乳を固めるようになりました。

こうして山羊や羊の子、子牛の
第四胃に存在する

凝乳酵素を取り出してそれを使って
乳を凝固し、

乳清を除去して得られたカードに
加塩してそれを

圧搾、熟成させて今日のチーズが
出来上がるようになります。

これらの工程は開放下で行うので、

乳酸菌、微生物の侵入と共に
乳酸発酵も当然進行し、
乳酸ができます。

するとここでも好都合なことが起きます。

実は、レンニン、キモシン
の作用によって乳が凝固するとき、

乳酸の存在はその反応を一段と
進める働きがあるため、

素早く確実に凝固物とホエーを
分離できるのです。

チーズ造りに関わる微生物の作用

さらに乳酸の蓄積は、
保存性を高めるだけでなく、

風味を増す点でも効果があるのです。

こうしたメリットが多い
発酵食品のチーズですが、

こうして発展していくにつれ
ひとつだけ問題が生まれます。

世界中にチーズが普及して行くと、

その分、レンニン、キモシン
を持った子羊や子牛が必要と
されるようになります。

1960年代に入るとチーズの
需要はますます多くなり、

処理される子牛は

(チーズ造りに使われた牛は多くの場合、
将来乳の生産が期待できない雄の子牛)

全世界でおびただしい数に
及ぶようになります。

当然コストがかかりますし、
時間も手間もかかります。

また生まれたばかりの子牛を
殺すのは可哀想でもあります。

そのまま育てれば、将来は
牛肉にもなる子牛を、

チーズを作る為に処理するのは
非効率であると言う考えとなるわけです。

そこで人類の発酵技術は
さらに進化するわけです。

そしてここに関わった人は
実は日本人なのです。

1962年に日本の微生物学者
である有馬啓さんたちは、

カビの一種である

Mucor pusilus(ムコールプルシス)
が凝固性を引き起こす酵素を生産する
と言う画期的な発見をします。

さらに研究を進めた所、

子牛の第四胃から得られる
レンニンとキモシンと全く同じ
作用をする酵素である事が分かり、

早速そのカビを使って微生物
キモシンの大量生産が行われ、

その結果、今では全世界で作られる
チーズの約3分の2はこの微生物
起源の凝固酵素で製造されているのです。

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